2019年はブロックチェーンゲームの未来を図るような試金石と呼べるゲームがいくつか出てくる年と考えられている。
現在、ブロックチェーンゲームとして注目を集める要素として3つ、流れとしては大きく分けてふたつ存在している。
【1】Non-Fungible Token(NFT)※1により、ゲームプレイおよびアイテムをアセットとして価値化する
【2】ユーティリティートークンとして仮想通貨による相互経済圏の確立を目指すポイント主体サービスの出先
【3】カジノやギャンブルのような換金性を主体に置いたゲームポイント市場
※1 Non-Fungible Token(NFT):相互に代替することができない独自性を備えたトークン。
【1,2】がエンタメとしてのゲームであり、【3】はギャンブル(賭博)のため、多くは規制下にあり【1,2】に対して違うカジノカテゴリの市場の流れとして取り扱われる。
今回は、多くのモバイルゲームなどでゲームエンジンとして採用されているUnityのアセットストアに仮想通貨プロジェクトとしてSDKを提供できているモノのみに絞り、それぞれ特徴を取り上げてみる。
プラットフォーマーとしてはシェア獲得こそが成功の道のため、多くの仮想通貨プロジェクトでUnity向けSDK開発を掲げている。ただし、仮想通貨プロジェクトの多くが誇大広告の問題を抱えているため、その中で、実際にSDKを提供し触れるモノを提供・継続開発できている事(コミットベース)をフィルター条件に2019年の状況を俯瞰するチェックポイントとしてみた次第である。
Unityアセットストアで確認できる。ブロックチェーンSDK
UnityのアセットストアでBlocKchain・Cryptoなどで確認できるSDKなどのツール類で、直近半年以内に話題となった、頻繁な動きが確認できているプロジェクトは以下3つが確認できた。
2018年、あれほどICOによるゲームアセットプロジェクトが乱立し、UnityやUnreal Engine 4をはじめとするメジャープラットフォームへの提供をうたったにも拘らず、1年を経過しても実際に提供のコミットメントまで到達している数としては正直少ないと感じる。
【ENJIN】Blockchain SDK by Enjin
Enjin Coinは、ゲームアイテムをパッケージ化してアイテム売買できるイーサリアム上のプラットフォームプロジェクトで、最大の特徴として、キャラクターとアイテムを一纏めにして一括処理できるようにしたERC-1155を独自開発している点。ゲームアイテムなどのアセットは最終的にはパッケージデータとなることが確実で、これをスムーズに処理できるよう当初から設計で考慮している。
SDKでは同一(代替可能)または固有(代替不可)のアセットとしてアイテム作成できる。その性質上、アイテムのデータなどは原則ブロックチェーン上に記録される仕様となる。NFTアイテムの作成、交換の導入に強いツールになっている。
【Dmarket】DMarket Integration SDK
DMarketは、アイテム売買プラットフォーム。イーサリアムのERC-20のDMTトークンを介して取引ができる。
このSDKは、同一ゲーム内、もしくはゲームAとB間など、ゲーム内アイテムを購入、販売、交換、および収集するためのRMTにトークンを用いるブロックチェーンベースでマーケットプレイスを導入できます。開発者、起業家、およびゲーマーによる仮想アセットを収益化できるとしています。
マーケットプレイス機能へのアプローチに特化しています。
【Kin】Kin SDK for Unity (Android beta)
Kinは3億ユーザーを抱えるとされるメッセンジャーアプリkikをサービスベースに、仮想通貨トークン「Kin」による経済圏を推し進めるプロジェクト。Stellarブロックチェーン上のトークン。
そのため、KinではKinトークンを自社のKikへ導入するだけでなく、様々なアプリケーションに容易にKinを導入できる各種SDKを提供しようとしている。そのゲーム向けがUnityアセットストアでのSDK配信。Kin SDK for Unity(Android beta)では以下の機能を主に提供している。
主な特長:
– 新規アカウントを作成する
– Kinウォレットを作成する
– ゲームプレイによりKinを獲得する
– 他のプレイヤーへKinをプレゼントする
– ウォレットのKin残高を確認する
機能は、アイテムの扱いに関するツールではなく、あくまでポイントの操作に終始しており、ゲームアイテム売買プラットフォームがゲーム向けに提供というツールではない点に注意。
調査して見えたもの
・3つの多くが未だテストネットがローンチされたばかり等のベータ状態であり、コア層がサンドボックスでの試行錯誤を続けている段階で、本番稼働の規模は一部実装のミニマムベースにとどまっている点には注意が必要に感じる。バグも多くかなりのアーリーアクセスになるので導入につまづき情報共有を阻害する機会損失を招いている。一見さんには未だ厳しいが、その一見さんが呼び込めるかが今後ひとつのカギ。
・NFTアイテムのデジタルアセット化による、ゲームAとゲームBでの交換の実装ケースはとん挫している。ブロックチェーンに全アイテムデータを書き込むことによるスケーラビリティーの課題や、設計の違うゲーム間での相互受け入れの汎用的な仕様づくりの難しさなどがあるためか。
アイテムをデジタルアセット化する仕組みのブレイクスルーが今年に出てくるのか。
・デジタルアセット化のメリットを現場レベル(もしくはユーザ視点)で実装で説明できているサービスが出てこれるか。
・ブロックチェーンではなくゲームとしてクオリティが高いものが必要なので、仮想通貨プロジェクト側でゲームクリエイター向けにSDK提供以上の何らかの支援が強く必要に思える。双方に掛かるコストが高すぎるので、ゲームのクオリティを上げるコストと、ブロックチェーン導入コストの両立ができていない。
・結局、今のゲームプラットフォームを握っている、Apple・Google・PlayStation・XBOX・Steamなどに透明で高い収益性と将来性を示して、舵を切らせるような何かを起こせないと変わらないかもしれない。ブロックチェーンゲーム市場規模が小さすぎて、前述のコスト両立に見合わないハイリスクになってしまう。